2015年 09月 13日
黒衣の刺客 みてきました☆
8年ぶりの新作、しかも時代モノ!!!ということで、みてまいりました。
(先日レディースデー利用で「Ted2」にいったら、SMT会員なので鑑賞クーポン割引できたので
久々に週末に(笑))
公式サイト→こちら
まず、最初に申し上げておきたいのは、わたしはけっこう気にいってしまいましたが、
万人におすすめできる映画ではありません(爆)。
なので、オススメ記事というより、ブログにありがちな、だらっと感想記事です。
ええと、日本版の予告はこんな感じ↓
これをみると、武侠活劇映画みたいですが、さにあらず!
風がそよぎ、鳥がさえずり、どこまでも「静」で、たいへん美しい映画ですが、
活劇ではありません!!!
そもそも原作が唐代の伝奇小説ということで、古典ですので、
基本的にゆるいわけです。アクション描写なんていう小説技法のない時代の作品だし、
古龍作品のような活劇ではありえないということです。
それじゃ環境ビデオ的かというとそうでもなく、最小限の台詞のなかの情報をたどると、
そこそこストーリーは起承転結、おぼろげながらあるのです。
前評判で、「わけわかんね(日本の映画評)」という話だったし、
この監督の時代モノといえば、「上海花 フラワーオブシャンハイ」という清朝の花街映画
があって、登場人物のアップほぼなしで、遠くでなんかやってるぞ!?という作品が
あったので、これですでに鍛えられているし、覚悟もできていたので、
鑑賞して、むしろ「ストーリーがちゃんとある」ことに感動してしまいました。
ただ、ほかの観客をみると、わたしの右隣の30代ぐらいの男性は始終あくびをし、
左隣の若い男性は途中から爆睡(いびきまでかいてたよ!(笑))というわけで、
かなり討ち死、続出(爆)。終わったあとなどは「1800円かえせ」とぼやく、武侠作品と勘違いして
きてしまった男性までいらっしゃった始末。
(なんか「楽園の瑕(原題:東邪西毒)」の香港公開時の映画館のよう!?(笑))
覚悟をもっていどまないと、なかなか手強い映画のようでした。
台湾の予告映像はこんな感じ↓
攻略ポイントは少ない台詞ながら、きっちり説明している人物相関図を覚えられるか、
それにかかっているかもです(笑)。
(ただ節度使とか歴史用語が出てくるから、唐代の事情を少しわからないとこれまた厳しいか・・・・)
ただ、重要人物のなかで、説明ほぼなしの謎の人物がおります。
妻夫木聡演じる、「磨鏡少年」です。
妻夫木さん・・・・・30代なんですけど「少年」なんですね・・・・・(笑)。
(日本字幕では青年になっていましたが、もともとのキャラ名は磨鏡少年デス)
旅を続けながら、鏡磨きをしている若者なのですが、けっこう動きが素早い、名無し少年。
劇中、「磨鏡少「」から身の上が語られることはなく、回想シーンで故郷に妻がいて、
妻は雅楽を舞えるらしいということが台詞なしで映像で語られるのみ。
妻夫木さんなんで、日本人としては「この人は日本人だよなぁ」と思うわけですが、
公式サイトやあらすじ紹介で、「遣唐使の日本人」という情報が公開されているのみ。
ヨーロッパの人はみていてどう思っただろう(笑)。
だけど、この人物だけが、刺客として育ち、凍りついてしまったヒロイン聶隠娘の心を
溶かしていく力を有している、すごいキーパーソンなのです。
そのヒロイン、聶隠娘を演じるのはスー・チー(舒淇)。
コメディ作品が多い彼女ですが、今回はクールで、カッコイイです。
始終、表情がかわらないのですが、心のうちにはあたたかい血が流れてる、
刺客になりきれない女性でもあります。
その彼女に、笑顔をもたらすわけですから、磨鏡少年おそるべしです。
(アップなんかにならないので、少年とヒロインが大自然のなかで再会する、
ふたりの小さい姿は大きなスクリーンでないと、顔までわからないかもですが、
たしかに聶隠娘は明るい表情を少年にみせているので、この映画をみる方は要チェックです)
これ以上ネタばれしませんが、予告編でもあるとおり、いわば敵役の
張震演じる田季安がはたして本当の敵役なのかどうか!?
というあたり、謎が解明されていく過程が面白かったです。
それから、↓こちらは今年5月のカンヌ映画祭で公開された予告映像ですが、
(これをみて「絶対に日本公開したら、観に行く!」と決めた映像でした)
どこかでみたことありませんか?この建物。
実は「ラスト・サムライ」でも使っていた、日本の兵庫圓教寺でロケしたそうです。
今回、ちょいちょい、日本の寺院の回廊を使ったシーンが登場し、
たしかに唐代ちっくなものを探すと、日本の寺院のおもむきがもってこいなのですが♪
これがまた映画に華をそえていて、ほかの大陸の風景と違和感なくとけあっているのが見事。
それもこれも、侯監督が台湾の人だというのが大きいのかも。
こんな発想はコッテコテ大好きな大陸監督にはないわな~~~~。
古刹や自然の美しさをこれみよがしに、虚飾まみれにせず、
ありのまま、素朴に描けるのは台湾や日本の監督にしかできないことでしょう。
大陸映画でも唐代を舞台にした作品いろいろあるけど、CG使って、バカでかい宮殿とか
広くて、大ききゃいいのか(ついでにモブシーンの人数もハンパないので)多ければいいのか
とうんざりする映画が多いなか、
侯監督はしっかり時代考証をして、古めかしくも美しい唐代の雰囲気をしっかり伝えてくれているので、
やっとみたかった唐代モノ作品と出会えた喜びがありました。
とにかく8年以上もかかった労作。
撮影も何度も中止になったり、主要人物の演者さんたちはよくぞ最後まで
撮影につきあったな、すごいなぁと感心しきりです。
舒淇、張震はもちろんですが、妻夫木サンも!
(王家衛監督だと当たり前かもですが(笑))
わたしはとても楽しかったので、BD出たらゲットしちゃいそうです♡
ところで、最後に・・・・・。
この映画を観にいったら、杉浦日向子原作の「合葬」の予告をみせられたのですけど。
わたくし、この漫画大好きなわけですが・・・・・。
彰義隊はよせあつめの集団だけど、ええと、3人の主人公たちってみんな江戸っ子侍だったはずですよね?
江戸育ちの若者がもつ、そこはかとない洒落っけとか、まったく皆無なんですけど。
集団で歩いているシーンの私服!?が、ただのこきたない田舎浪人にしかみえないし。
・・・・・ヤバイぐらい、江戸侍らしさがなさ過ぎて、ついつい笑ってしまいました。
幕末モノというと、なんでもかんでも西国志士的テンションと決まっているようですが、
江戸産の志士はぜんぜん違うテンションなんで・・・・・。
せっかく杉浦さんの作品の映画なのに、嗚呼、がっかり。
だけど、なんか・・・・・新選組!の斎藤一(asオダギリジョー)がいるんですけどぉ!??
姿かたちが同じすぎて、ドキドキしちゃいました。
(斎藤、いつのまに彰義隊にからんでたんだ的な・・・・・・(笑))
以上おまけでした。
ワタクシも杉浦先生が大好きです!
なのにコレは……(涙)……。
幕臣さんはいくら自宅で傘張りしてようがスズムシ・金魚のブリーダーしてようが、一歩外に出たらシャンとしていたはずでは?
だから「御」旗本・「御」家人と尊敬の意味をこめて「御」がつけられてたんじゃありませんか?
だって地方から来た人も「御旗本はお行儀がよかった」と証言してますし。
おサムライさんすべてをサッチョーの下品な下士・郷士と同一視的するのだけはホント勘弁してもらいたいですねっ!
(陪臣だけど、会津武士だってアイツらとはちがうー!)
史実無視で描かれるくらいなら、むしろ映画化なんかしないでほしい…。
まさにまさにおっしゃるとおりですーーっっ!!!
>おサムライさんすべてをサッチョーの下品な下士・郷士と同一視的するのだけはホント勘弁してもらいたいですねっ!
そうなんですよねっっ。
幕末の若者で、どこかの隊に入ったりする、いわば志士だとなんでも一緒のこきたな系に描く傾向はリサーチ不足すぎ!!
とか憤ると、まぁまぁいいじゃない、時代劇なんだし的に言われるときがあるのですが、
だったら彰義隊に触らないでおくんなさい、と言いたいですね(笑)。
わざわざ彰義隊をテーマに扱うなら、彰義隊でしか描けないものを描いてほしいし、
ほかにないもの、キラリとひかる個性のある作品にしていただきたいものです。
(ちょっと週末に個性的すぎる古装映画をみてきちゃったので、興業成績無視のこわいものなし主張になっているかもです(笑))
彰義隊にかぎらず、江戸の若者はお金なくても、ちょっとしたワンポイントオシャレをするのが粋なんで、そういう文化みたいなものを大切にしてもらえたらと思います。
じゃないとせっかく映画化する意味って!?ないですしネ。
いや~~、よかった。あっという間に終わってしまった。
もっと見ていたかった(いや、あの終わり方は素敵だったけど)
監督も言っている通り「台詞でなく映像で説明したかった」ってのがよく伝わって、さすが侯孝賢! って感じの映画になってましたね~。
もともとの「聶隠娘」のぶっ飛んだストーリーをうまくリアルに表現してて、本来なら強引&人非人な道姑も、過去になんかありそうな深みを感じるし、原作の人間関係をうま~~く再構築した、いい映画でした。
張震の演じた魏博節度使も、原作以上に葛藤がありそうないい感じにできあがってましたし!
ただ欲をいえば、場面によって植生がバラバラなのが気になっちゃいました(;^ω^) 台湾人の監督に華北の季節感まで求めるのは欲深すぎですかね~。
いい映画でしたよね♪♪
いやーよかった、きりゅうさんのお墨付きはデカイです!!
近ごろ、ガチャガチャした映画が多いので、なんか久々にいい~感じでした。
なんか、ふわっと終わってしまい、おっしゃるとおり、あのラストで良かったのですが、
欲をいえば、もっと見ていたかったです!
説明もしっかりされていたし、わかりやすかったと思うのですが・・・・。
(でも寝ちゃう人多数だったんですけどねっ(爆))
昔、もっとわかりにくい、というかちゃんと説明のない映画にバリバリ鍛えられたせいか、
むしろこの映画、めちゃめちゃ親切だと思ったぐらいであります。
>場面によって植生がバラバラなのが気になっちゃいました
なるほど!!!
それは、やはり華北のことは、台湾スタッフでは不慣れゆえ・・・・・。
ただ、あの当時・・・・。新羅経由で日本へ帰れるものなのだろうか、
というどうでもいい心配だけがかすかに残りました(笑)
「魔」じゃなくて「磨」のはず。
なので「鏡磨きの若者」となります。
原作では聶隠娘がこの人しかいない!と結婚する相手(ネタバレ失礼)で、新羅へは行きませんが、できればこの映画のように二人で旅していってほしいな~~と思ったりしました。
>磨鏡少年
おお!ありがとうございます!
さっそく記事のほうも、訂正しておきます!!
原作のあらすじをちょっと調べてみたら、二人はいきなり結婚している設定のようですよね(笑)。
さすが唐代の小説・・・・・荒っぽい。
映画では新羅まで一緒にいくようですが、ついでに「YOU、日本へきゃいなよ」って
誘っちゃえば、なんて(笑)。
聶隠娘、奈良の都で大暴れ・・・・・・。
(うーん、自分で打っといてなんか陳腐な感じ(汗))
コメントありがとうございます☆
久々にみた、惚れ惚れするような美しさの映画でした♪
この作品の評価をみると、アクション映画と間違えたお客さんが
多いようで、なんとも残念でした。
(王家衛の「グランドマスター」のときほど宣伝ミスをしたようには
思えないのですが・・・・・)