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東都アロエ

『幕末京都の政局と宮廷』

秋に都立中央図書館にまいりましたところ、人文コーナーの書棚で
偶然に出会ったのがこの本。
宮地さんの本は史料本であっても、初心者にもわかりやすく丁寧に
解説くださるのでなんとなく手にとったら!これがまたなんだかやめられない
感じになってしまったのですが、その日は東京国際映画祭の上映時間の合間を
ぬってコピーにきただけだったので、泣く泣くすぐにこの本と別れた。
年末にほんのちょっとだけ予算が余ったので、思い切って古本にて購入。

正式タイトルは長い!
『幕末京都の政局と宮廷~肥後藩京都留守居役の書状・日記から見た~』
(宮地正人 編解説 名著刊行会)

元冶元年から慶応元年まで京都留守居役をつとめた、
肥後の学者・上田久兵衛の書状と日記をまとめたもの。

肥後藩は朝幕融和運動をおこなっていた派で、しかも京都の最前線にいた
上田が運動実現のため奔走する様子とともに、この時期の京都の政局の様子も
伺えるとてもありがたい史料集だ。

正直、この時期の京都の動静を把握するのはかなり難しい。
というのも、多くの藩が入り乱れて、同時多発的に物事が進んでいるからだ。
まるでオペラやミュージカルで6人ぐらいが同時に歌っていて、
個々に歌う内容がわからない状態に似ている?
・・・なので、これを読んだからといってこの時期について100%の把握は
できないが、かなりヒントはもらえる。
まだじっくり咀嚼していないが、さらさらと読んだだけでも楽しい。

さて、ここでもあの男が登場する。永井主水正(当時は大目付)だ。
上田さん、永井さんと短い時間で仲良くなり、長州征伐などについても
よく話し合っているのだ。
どうでもいい話だが、上田に煙草をお土産にもらった永井はお礼に
さっと扇子に漢詩をしたためてプレゼントしている。さすが文人、風流だ。
(酒好きなのは有名ですが、煙管なんかをカンカンとやっちゃうんですね。
永井さんは。粋だなぁ・・・(笑))

ちょっと面白かったのは、この時期の京といえば新選組。彼らの名も登場するのだ。
慶応元年十月二十二日の項に、

朝柳井来、新選組武田観柳、伊藤甲子太郎、沖田総司来、北京ニ盧俊義アルヲ知ル故也、来客多忙、夕河添来、余醉倒、
(漢字は史料のまま)

・・・・・・・このいっけんするとありえないメンバーで上田に会いにきている(爆)。

いろいろなヒントをくれた上田だが、郷里にかえって維新をむかえ、
思ってもいない形で政権がかわり、無念の思いはいかばかりだっただろうかと
推察されるが、それを押し黙って静かに余生を過ごしてたが、
西南戦争のおり、西郷に味方したとの勝手な罪状で処刑されてしまう。
京では会っていたかもしれないが、明治になって、西南戦争のおりには
一度も会っていないと主張するも聞く耳をもたれなかったらしい。
天下安寧のために奔走した上田の扱いとしては、あまりに酷くはないか?政府軍よ。
by aroe-happyq | 2007-01-06 11:11 | 広く幕末ネタ | Comments(0)