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東都アロエ

寺澤正明《幕末秘録》

箱館ファンの方々のあいだではもうおなじみの本でありましょうか。
箱館初心者としては一歩一歩ゆっくり進んでいるのですが、
やっとここまでたどり着きました(笑)。

寺澤正明は奥詰銃隊から彰義隊に加わり、その後品川から開陽に乗り、
箱館にむかった人です。
そしてこの《幕末秘録》は寺澤翁の回想録。最初は新聞連載でしたが
のちに山崎有信の編集により、本にまとめられました。

国会図書館でマイクロフィルムにて閲覧したのですが、
最初はほんの参考にという感じで読み始めたら面白くて、
気がついたら複写してしまい、夏目漱石が幾人も飛んでいったという
自分としては思わぬ散財の一冊です(笑)。





彰義隊の様子もよくわかりますし、箱館生活&戦争について
いろいろ情報をくれます。
で、箱館にいくために、また品川沖で開陽に乗せてくれーと
榎本釜次郎に頼みにいったシーンがまた面白いです。
(丸毛の回想録とかぶる部分もあります)

釜「・・・(略)・・・君達が外国人が嫌では御話にならん。且つこの船は船中
の物ことごとく外国式だ、君達がそれが嫌では到底事を共にすることは出来
んから御断り申す。君達は君達で勝手にしたら宜かろう」
寺「我々は既に一身を貴下に任すと決心して来ましたから、もう
そんな頑固な事は誓って云いません」
「ハアそうか、それでは西洋人を嫌だとは云いませんか、それでは直ぐ引き合わせ
ましょう」
チリンチリン、卓上の呼鈴が鳴った。
「ブリウネ君とカズノフ君をここへ」


いきなり初外国人との遭遇で驚いていると、

ブリュネ「貴方上野で敗けましたが弱くありません。これから私と蝦夷行きます。
蕨の根食べます。開陽タイヘン良い船あります、敗けません。来年三月帰ります。
その時貴方上野の桜花見ます。楽しみますか、酒飲みますか、喜びますか、
私思いません。貴方泣きますある」


楽しみますか、酒飲みますか、喜びますかのあたりに至っては
『防人の歌』かいと思わずにはいられませんが(笑)、
しかし寺澤たちはこのブリュネの言葉にじーんときてしまい、
あっさり外国人嫌いがおさまります(単純!?)。
このあたりも釜&ブリュネの作戦勝ち!?
この後も彰義隊内の不和を解決する榎本の巧みな話術ぶりも面白く
気がつくと釜さんの掌で踊らされている彰義隊ズがおかしく、
楽しいエピソードも満載です。
(あらためて榎本釜次郎、外国奉行の素質アリアリだと確認しました(笑))

箱館で落ち着いた後も、彰義隊内の渋沢栄一と寺澤たちの不和はおさまらず、
ちょっと面倒くさくなった釜さん、
又彰義隊と渋沢が喧嘩を始めた相ですな、面倒だから五稜郭の前で
渋沢と叩き合いさせておしまいなさい」
「イヤ、実はかくかくの次第で」
と松平氏事細かに仔細を榎本氏に話して、
「だからマァ一度会って主意をよく聞いてやって呉れませんか」
「フーム左様か、ぢゃア宜しい、会うとしましょう」

と副総裁松平太郎とのコンビネーションにより、
またまた彰義隊の混乱を見事な榎本裁きでおさめてしまう(笑)。
・・・・・・とこんな貴重な釜&たろさんコンビの活躍ぶりもみられます。

そして当ブログでもすっかり有名な釜次郎切腹未遂事件も、
寺澤目線で登場します。
爆笑なのがその小見出し。「二階の四畳半」。
来年箱館奉行所屋敷オープン後、二階がみられるよう祈るばかりです!(爆)
(釜さんの人形が置いてあったりしたら、笑いすぎて階段落ちしちゃいそうです)
ただ寺澤さんたまーに記憶違いがあって、二階へかけつける医師がここでは
高松凌雲先生になってますが、それはまつがい。

しかし戦争後、弁天台場に集められた捕虜たち(寺澤もそこにいた)
の厳しすぎる越冬生活には思わず涙が・・・。
そしてようやく静岡藩や東京に戻ってきた箱館脱走連。
かれらは牢獄に入れられっぱなしの榎本たち幹部の処遇に注目したのですが・・・・・・
一人は総代として殺されるだろう、殺されるとすれば永井玄蕃が最も年長者であり、
旧幕の大目付で、資格も一番上であるから、永井氏が殺されるであろうなどと
同志相語って居たが、いよいよ永井氏も助かると聞いてから五日ほど経つと、
皆牢から出されて久しぶりに青天白日を仰いだ。


大目付もやったけど最高位は若年寄だよ、などとつっこみつつ、
こんな噂があったとは驚きでした。
榎本釜次郎じゃないのかー、永井なのかーみたいな(笑)。
たしかに獄中の幹部連中のなかで、テクノクラートとして新政府が
欲しがっている才能も技術も持ってませんものね、おじーちゃまは。
いちばん惜しくない人物だったかもっっ。
(それで永井翁、あの壮絶な愚痴漢詩をつくったのか?早く殺すなら殺してくれ~
みたいな・爆)

ラストは弁天台場の「謹慎生活」時代に捕虜取扱役でずいぶんと
寺澤たちをいじめた前田雅楽なる人物を向島の料亭に呼び出し、
仲間のみーんなでかわいい逆襲をするところで終わります(笑)。
呼び出されのこにこやってくるほうが悪い!というわけで、
寺澤翁の長~い御話は心地よく終了となりました。

いくつか記憶違いもみられますが(最初の新聞連載当時、榎本たちから
ずいぶん訂正があったらしいけれど・笑)、ほかの史料と組み合わせて
読む分には問題はないかと存じます。

こういう面白い本がもう少し手にとりやすい形で出回ると、
旧幕ワールドの普及にも繋がるのですがネ。

※今回引用部分につきましてはいくつか現代語になおし、読みやすくしております。
Commented by 高松飛鳥 at 2009-09-27 13:20 x
榎本さん切腹未遂時に、凌雲先生の名前何で出てくるんですかねぇ?病院に軟禁状態なのに。
恐らくは、五稜郭病院の誰かだと思います。(この五稜郭病院って言うのも謎ですが)

まだまだ面白いエピソード、いっぱい有りますね…榎本さんのやりとり最高ですね!!流石は総裁です!!
Commented by 香音里 at 2009-09-27 13:37 x
はな。さん、またまたステキな史料の紹介、ありがとうございます。

私的に、彰義隊といえば常にもめ事を起こしているようなイメージがあるのですが(笑)、さすが榎本さん、血気盛んな諸士の扱いも心得ていたんですネ。
いや、でもブリュネさんの言葉を読んで、私もちょっとじーんとしちゃいましたよ。

「殺されるとしたら永井さんだろう」とみんなで語っていたという話は、永井さんには失礼ながら、笑ってしまいました。
それで本当に永井さんだけ処刑されていたら、可哀そうすぎます(泣)、ていうか、榎本さんの立場は?
Commented by 早々 at 2009-09-27 16:13 x
はな。さんの解説で、この本の内容の概略、榎本釜さんの人柄や問題点の適切な解決方法など改めて釜さんを知りたくなりました。
永井様は命びろいしましたね。
よく調べておられるので本当に助かります。

話は私的ですみません。昨日9月大歌舞伎の楽日で吉右衛門と幸四郎を観てまいりましたが、台詞もはっきりと聞きやすい吉右衛門の芸風の方が好ましかったです。
Commented by はな。 at 2009-09-27 18:49 x
高松飛鳥さん☆
なにせ寺澤翁、数十年経っていたのでこちらの回想録にはかなりまつがいがあります。高松先生については完全に記憶違いですね(笑)。病院から動けません!ですもの~~。
Commented by はな。 at 2009-09-27 18:55 x
香音里さん☆
>彰義隊といえば常にもめ事を起こしているようなイメージ
そうなんです、ありますよね(爆)。
榎本総裁もたいへんです・・・・・・。

>永井さんだけ処刑されていたら、可哀そうすぎます(泣)
永井翁は本望だったかもしれません(爆)。若い才能ある若者が生き残るのなら。でも全員処刑だったらたぶんキレるでしょうっっ。
Commented by はな。 at 2009-09-27 19:01 x
早々さん☆
御役にたててなによりです。
今回のはたまたまの拾い物でしたが、まだどこかに愉快な史料があるのかと思うとわくわくしてしまいます。

>9月大歌舞伎の楽日
おおー!行かれましたか♪
実は今月の歌舞伎は行きたかったところでした。吉右衛門丈が素晴らしいと大評判でしたし☆
私も実は歌舞伎は吉右衛門丈のほうがぴったりだと思います。幸四郎丈はミュージカルの舞台のほうが素敵にみえます(笑)。
Commented by きりゅう at 2009-09-27 19:22 x
>楽しみますか、酒飲みますか、喜びますか、
私思いません。貴方泣きますある

なぜでしょう? こう言ったブリュネの姿が
一瞬ありありと目の前に浮かびました。
私、この人と会ったことあったのかしら?(^^)

笑います。笑います。
泣きますある。
Commented by はな。 at 2009-09-27 23:12 x
きりゅうさん☆
>私、この人と会ったことあったのかしら?(^^)
わはは☆
きっとあるんだと思います(爆)
ちなみにワタシの場合、
笑います。笑います。ずっと笑います・・・・・・苦しますある
という感じですっっ
by aroe-happyq | 2009-09-27 11:27 | 箱館または釜さん | Comments(8)