2006年 10月 21日
なごやかな空間~大奥秘記にみる老中と若年寄の諍い
ある老中と若年寄の会話(斜文字部分が引用)。
老中「何々のことは何々してよさそうにおもう」
と小声で、若年寄に話した。すると、
若年寄「今更左様なことをおっしゃっては決して成りません、馬鹿なことを」
とつい、馬鹿といってしまった。
気の弱かった老中は赤面して
「各方が夫までに御申ならしかたがない」とすごすごと去った。
それをきいたほかの若年寄たちが、馬鹿といっちゃった若年寄を噂して、
「今のことはあれでよけれど、馬鹿はひどいよ・・・」という。
それをきいて驚いたのが馬鹿といった本人。
どうもとっさのことで馬鹿といったことを憶えていなかったらしい。慌てて、
お詫びにいこうとすると、同僚たちが、
「今更、先ほどは馬鹿と申て失敬の御侘を申ます、
といったならば夫こそ誰殿はお困りになるだろう、
先様も御心附なかった様だから・・・・」
詫びにいかなくてもいいだろう、と一同笑い話ですませてしまった・・・・・。
(ちなみに老中は稲葉美濃守、若年寄は稲葉兵部少輔さんだとのことデス)
江戸柳営のみなさんのいいところはけして事を荒立てない。
こうして最後は笑っちゃうところがなんてスマートなんだろうと思うのです。
なんだか、かなり深刻な場面でもこういうところがあります。
あんまり悲劇すぎて笑っちゃう、そんなセンスの彼らなのです。
どんなときもよく笑う。それが江戸の侍です。
(そーゆー軽い感じが大嫌いな人もいます。井伊大老とか(笑))
それから言葉使いもなんだか、かわいらしい。
(江戸開城のおりの緊迫したなかでさえなんだか、かわいい会話なのです・・・・・)
というわけで、このゆるーい柳営ワールドにますますはまっております。