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東都アロエ

やはり水野は・・・・・。

中根雪江の「昨夢紀事」3,4巻を読んでおります。

その途中、かねてより気になっていた水野筑後守の一件について
岩瀬が橋本左内に面白いことを語っておりました。

(水野は)忠赤餘りあって確實なる事當世無双とも可稱由
去年墨使初而備中殿と應接の時、
御席に連なり居しかハルリスの英夷の事を説きしを虚喝として更に
承引せず固く執て極論に及ひ殆と評定一坐の面々を動揺する勢いにて
當前の事機に於て支吾せし故止事を得ずして當役へ轉せしなり。
                   (『昨夢紀事』3巻 353P)

「忠赤餘りあって確實なる事が当世無双な」水野さんは、
ハリスと堀田備中守が初めて会った席上、ハリスがイギリス(英夷)について説き始めると
「それは虚喝だ!」と非常に熱く論じてしまい、応接掛みんなでびっくりしてしまった。
このように談判の席上でいきなり応接掛が進行に支障をきたしてしまうのはよろしくないので
(田安家家老へ)役替になった・・・・・ということでした。

でも岩瀬さん、水野をけして否定してはおりません。
「当世無双」・・・・・・これってそれなりに褒めていると思います(笑)。
だから橋本さんに語って聞かせちゃうのです。
「困った人なんだけどさぁ、ははは」という感じでしょうか。
というのも、あいかわらず、「信念の人」水野さんは一橋派官吏として大活躍しております。
彼の頑張りがあるからこそ、岩瀬たちは条約の勅許のほうに集中できるのですから。

でもこの史料からみると、カモフラージュ作戦は偶然の産物!?(爆)
役替になって暇になった水野はたまたま一橋派の運動に夢中になれる環境になっただけ
ということかも。むむむ、予測が外れた。

三巻にはいると、永井玄蕃頭が鵜殿にかわって活躍をはじめ、3~4巻はだいたい、
水野、永井、岩瀬が一橋派として、また開国派として奮闘しております。
ただ、かれらは宮廷政治には向きません。大奥への工作は薩摩の西郷さんたちが
担当してはいますが、そのあたりのツメが一橋派全体的に足りないぞ、と素人眼にも明らかです。大奥の影響力を侮ってはいけませんのに(笑)。
・・・・・などと、ぼやきながら読み進み中です。
でも結果を知っているからこんなぼやきも出るわけで、それは彼らからすればズルイですよね。明日を知らないから探りながら走っているわけで、知っていたらちゃんとツメていますもの・・・・・。
歴史をみるとき、結果(未来の出来事)を時には忘れないと判断を誤ってしまいます。
王政復古~明治維新の流れから逆算するから、攘夷志士が正義で、その反対勢力が
だらしない過去の遺物扱い(爆)されてしまうわけです。
当時の記録をみると、相当・・・・・攘夷志士なぞただのワルですからね。
味方が勝ったからこそ、英雄呼ばわりなわけです。
『昨夢紀事』の一橋派も敗れたからいまいち忘れられた存在ですが、結末のまだ知れないこの本のなかでは(この書物はずっと後になってから編まれた本ですけど)、彼らは江戸を、天下を動かしているわけですから、そのあたりを踏まえて、冷静にひとつずつ調べていきたいと思います。
(井伊さんだってまさか数年後、自宅出てすぐ駕籠を襲われた挙句、首をとられちゃうなんてそんな未来は想像だにしなかったに違いあるまい)。
by aroe-happyq | 2007-01-24 19:34 | 外国奉行ズ | Comments(0)