人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

東都アロエ

時の権力者のはずが・・・杉享二自叙伝の阿部正弘

久しぶりの『杉享二自叙伝』ネタです。以前はこんな感じで紹介しました。

杉は勝海舟の門下にいましたが、その後阿部伊勢守正弘に仕えます。
きっかけは長崎海軍伝習所に杉が伝習生に加わることになったことでした。

其傳習人の名前書を勝から閣老へ出した、ところが、其人々は皆藩名の肩書が
ある、獨り余は長崎産と計りであるから、是はどういふ人間だと云ふことを
閣老の阿部候(伊勢守)が尋ねられた、是は長崎産の生れで蘭學が出来て
人物はどうだ、とか勝は答えたそうだ、さうすると、阿部候はどうか、私の所へ、
よこして呉れ、又其事を當人にも言って呉れ、といふ事であった、
折角長崎に行くことになったのに、阿部の方へ行くのは迷惑だから斷った、


・・・・・ポイントは「折角長崎に行くことになったのに、阿部の方へ行くのは迷惑だから」
断られてしまう阿部正弘
そして、相手は誰だろうが断ってしまう勝麟太郎!(爆笑)

老中首座で、泣く子も黙るほど怖くはないが、目配せひとつでひとりや二人この世から
抹殺することなんて朝飯前の権勢を誇ってるというのに、
勝如き(だってこの頃、すんごくペーペーですもの!)に迷惑と断られて、
「・・・そうか」と引き下がっちゃう伊勢守ってなんて素敵でしょう(笑)。

もちろんこの話はここで終わったわけではなく、この話をきいた伊澤美作守(ペリー応接掛
で大活躍後、このときは長崎伝習所人事課のトップ。次男謹吾と榎本釜次郎は親友らしい)
は慌てて、勝に「杉は江戸に置いていきなさい」といって、杉は伊澤の周旋で阿部に仕える
ことになった(笑)。

その杉の阿部正弘の印象は、

始めて接見した時の温和の風采は今日になっても目に見るやうである

やはり「温和」だったらしい(笑)(さすが弘化嘉永の微笑みの貴公子サマ)。

この後、この本には杉から世界のことを学ぶ伊勢守の姿も登場するが、
それはまた別の機会に!

阿部正弘がどういう人物かは明治に出された、渡辺修二郎著『阿部正弘事蹟』に詳しいが、
なにせ、国会図書館近代ライブラリーにはこの本の一部しか開示がないし、
古本はぶっ飛ぶほど高い(再版してくれー!)ので、まだ読めずにいる。
輝かしい政界での活躍はどこでも読めるけど、そういう活躍をした人の個人にも
迫りたくなるのが自分のビョーキなのだ。だからどーしても知りたいなぁと思ったら、
そんなとき、杉の自叙伝が少しだけど教えてくれたのでした。
それを読んでますます、阿部ちゃん、いいなぁ!と思うのであります。

*風采ですが、阿部さんのお姿は教科書に出てくる油絵バージョンよりも
日本画バージョンのほうが好きです。あの油絵の阿部は・・・・ありえない顔でしょうと(笑)。
(日本画をもとに陰影をつけたのでミョーなモンタージュ写真みたいだし)

追記(3月14日)

その後、気を取り直して近代ライブラリーに詣でたところ、
全部公開になっておりました!
というわけで、只今「阿部正弘事蹟」を少しずつ読書中!
Commented by AO at 2010-11-22 18:08 x
ちょっと思い立って杉亨二検索してみたら、こちらの記事がヒットしたので参りました。
私、杉亨二の玄孫にあたります。あんなマイナーな(笑)自叙伝を熱心にお読みになる方がいらっしゃるんですね……ちょっと感動しました。ありがとうございます。
子孫の私はというと、恥ずかしながら、昔ざっと斜め読みした程度です……。

私が聞いた話ですと、長崎伝習所だけではなく、咸臨丸の時も本人は乗る気満々だったのですが、同じように「え、ダメだよ、杉は置いてって〜」と言われて乗り組めなかったとか。(笑)
そのため、明治になってから杉は、長男(私の曾祖父の兄です)成吉を執念でフランスに留学させたそうです。しかし、フランスで10年軍艦製造を学んで25歳で帰国する途中、乗り組んだ軍艦が遭難、日本に帰ることはなかったそうです。

すみません、昔聞いた話を思い出して、つい並べ立ててしまいました。
唐突に、失礼いたしました。m(_ _)m
Commented by はな。 at 2010-11-22 19:41 x
AOさん、はじめまして☆
コメントへの書き込みありがとうございます!
AO さんの御先祖様の杉亨二さんには自叙伝のほか、雑誌『旧幕府』における史談会での証言(自叙伝よりもさらに細かい証言部分がありました☆)等々、「当時」の様子を知るうえで本当に助かっております。ありがとうございます!!!・・・・・・杉さんご本人に御礼を申し上げられないので、御子孫さまにこの場をかりていわせてくださいませっっ。

>咸臨丸の時も本人は乗る気満々だったのですが
長崎海軍伝習所のみならず、咸臨丸も×だったのですか!!!
・・・・・・杉さん、お気の毒っっ(涙)。
そして長男さんのフランス留学、そして帰国できなかったというお話も。
自叙伝では知ることのできなかった、貴重なお話を伺えて嬉しいです。ありがとうございました!
by aroe-happyq | 2007-03-05 10:31 | 幕臣系(老中など) | Comments(2)