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東都アロエ

映画「大奥」 その暴走の果て(珍しく毒吐きモード☆)

よせばいいのに、やっぱり録画しちゃって・・・・みちゃいました。

嗚呼・・・・非道かった(涙)。
6代将軍マニア云々以前に、まずこれ・・・・映画すか???
映画というより、レターボックス仕様で作ったドラマスペシャルにしか
みえないんですけど・・・。
映画というには、スケールがあまりに小さすぎ(涙)。
せっかく大奥シリーズ最後の華・・・・なので、もっとどばーっと、
「おおー」というような壮麗さとか、凄みをみたかったな・・・・・。
(日本映画がせっかく好調なので、もっと野心的な作品お待ちしてます)

そしてマニア的にみても、キャラがみんな、設定が適当で、
この時代のマニア的にはあまりにも非道すぎて、
・・・・憤怒をこえて爆笑につぐ爆笑でした。

いちいちダメだしをはじめても、詮無きことですので、
世間には認められているかは知りませんが、
長きにわたる6代家宣フリークの
かき集めた史料、論文などから史実的公式情報(笑)だけを書きます。


○間部越前守詮房情報

・ 元は喜多流一門の能役者。能好きの甲府綱豊(のちの家宣)に手ほどきした際、
 家臣にならないかとスカウトされた(笑)。『甲子夜話』には眉目秀麗の詮房に
 綱豊が一目惚れしたとの話が載っている。
 生涯、一心同体というような親密なこの主従については、江戸時代のあいだでも、
 噂の的だったらしい(爆)。

・ 学問好きの綱豊だったが、能はもっと好き。
 そのため、将軍になっても演能した。側用人間部詮房はたいてい共演者(笑)。
 踊る将軍&側用人・・・・・だった。
 しかしむやみに能を催す宴会をやっていたのではなく、研究者によれば、
 旧甲州家系家臣団の会合の隠れ蓑として、薪能などを利用したとの話もある。
 (確かに、ただ遊んでいたとは、考えたくないもの・・・です(笑))

・ 間部詮房の滅私奉公ぶりは当時から有名で、家宣、そしてその子の家継を
 補佐した手腕も高く評価されていた。政敵であった紀州吉宗(のちの八代将軍)も
 「できれば自分も間部詮房のような家臣を持ちたいものだ」と知り合いへの手紙に
 書いている。朝廷の重鎮、家宣の岳父である近衛太閤もまた間部詮房を「顔だけ
 じゃなく、よく仕事のできる男」と高く評価していたらしい。
 お仕事ぶりを示す記録をみても、切れ者であったことは事実のようです。

・ 家継に対してはたいへん厳しく、父親の面影を詮房に求めようとする家継には
 距離をおいて接した。
 亡き家宣の遺言にこたえるべく、家継を良き将軍に育てようと教育に力を注いでいた。
 自ら幼少期に能役者として厳しく育てられた経験があるためか、
 けっこうスパルタ式だったらしく、このためか家継は間部詮房をちょっとこわがっていた。

・ 心血注いで尽くした家継が病で死んでしまうと、権勢に執着のない詮房は、
 将軍御養子に、政敵の紀州吉宗を迎え、鯖江に去った。
 本来なら味方筋の尾張公を御養子にすれば、自らも安泰だったのだが、
 尾張公に将軍としての器がないと判断し、すばやく紀州吉宗を選んだ。
 この決断力には政敵一同驚き、間部の政治的才能を再評価している。

・ 若い頃(二十代)主君甲州綱豊の斡旋で、一度妻をもったが死別後はずっと独身。
 妾などいっさいゼロ。晩年失脚後、鯖江に暮らした数年間、身の周りの世話を
 する女が一人いたらしい・・・・という記録以外、女性関係の噂なし。

・ 反間部派は最初、月光院と間部詮房のスキャンダルを吹聴したが、
 誰も信じなかった。この作戦が失敗したため、絵嶋作戦を展開する。
 なぜ誰も信じなかったか・・・。それは側用人として権勢の絶頂にいる男が
 再婚もしない、妾もいない・・・・・という一般常識ではありえない現象に、
 大名・公卿ぜんぶに 「詮房は女嫌い」というスペシャルなレッテルを
 貼られていたため。
 


○月光院情報  

・ 家宣にもっとも愛された側室。芯のしっかりとした江戸女であったらしい。

・ 家宣亡き後は家継を立派な将軍にすることに全力をそそいだ、教育ママだった。

・ 間部とは、共に家宣に寵愛を受けた者同士、実によきコンビネーションを展開。
 ただし、男女の関係にいたるはずも・・・・なし。
 (もしもあったとしても誰も信じないという哀しい状況ですが・・・)

○天英院情報

・ 大奥のドンにして、影の実力者である家宣正室の天英院(近衛煕子)は、
 「男であったらさそかし立派な政治家になったものを」と父(近衛基煕)に
 もったいがられるほどの才女。
 家宣や詮房とも、甲府宰相時代から政治家として協力関係にあった。
 女性という前に、老獪な政治家。江戸の風俗を嫌い、徹底的な京好み。
 (役者買いなんて、ありえないお下品な遊び・・・・という価値観のひと)
 
・ 紀州派と結んでいたが、間部とも協力関係・・・という二枚舌?

○江嶋情報

・ 芝居小屋の二階桟敷から、江嶋一行が酒をこぼしたのは事実。
 どうも久々の外出で奥女中ズはフィーバー(死語)していたらしい。

・ 彼女が犯した罪は、代参で外出したおり、門限に遅れたこと。
 そのときは門を通してくれたのに、数日たってから、急に詮議となった。

・ 江嶋は最後まで生嶋との密通を否定した。

・ 高遠で、かなりの高齢になるまで生き続けた。
 
○生嶋情報

・ 初代團十郎とともに超人気役者だった。

・ 江嶋一行の芝居見物の際、看板役者なので、江嶋に挨拶をし、
 ほんのお付き合いということで、宴席で相伴にあずかっただけ。
 その前もその後も江嶋に会った事はいっさいなし。

・ たったこれだけ↑のことで、遠島。
 あたら役者盛りをむなしくした、彼こそが本当の犠牲者。


・・・・もっとたくさんあるのですが、とりあえずこの映画と
関わりそうなところだけですいません。以上です☆

事件についてはちょうど一年前、
この映画上映の頃、やっぱり心配だったのか、
こんな記事にまとめてありました(笑)。

 
この江嶋事件の背景には反間部派の思惑もありましたが、
5代将軍綱吉以来の贅沢三昧の大奥バブルを潰して、倹約徹底へと
もっていきたかった、閣老の思惑もまた重なりました。
富士山の噴火、大地震・・・と度重なる天災で、柳営の金蔵もカラッポで、
大奥だけが昔のままにまかり通ることは許されなかったはずですが、
幼い将軍は大奥との関係なくして成り立たず、それをいいことに
天英院や月光院の女中たちが好き放題していたのは事実。
こんな荒療治をされる前に、自粛していたら・・・・・よかったのですが。
(でもそんな大奥なんかとまったく関係のない生嶋がいっそう哀れ・・・っす)

実はこの事件は、政治史的にすべて解明されていない、
幕閣のさまざまな力関係もかかわっている、とても複雑な背景をもっているようで、
とんでもない人数が連座と称して、追放されたり、処罰されている不可解さも
いずれ明らかにされていくことを願うばかりです。

つまり、ただの色恋ではすまされない、難しい事件だったのです。

・・・・・・・江戸時代の人々が少ない情報で、講談として面白おかしくフィクションとして
描くのはいっこうに構わないと思うのです。
我々が手にできる柳営の日記や、吉宗の書簡などを見られるはずもないのですから。

ですが、現代の我々はそうはいきません。
膨大な史料を手にすることが出来るし、多くの研究もされております。
そして我々が接する映画にしろ、ドラマにしろ、
こうした江戸時代の物語のなかに、いくつかの史実が組み込まれているので、
どこからフィクションかどうか、その境界線があいまいです。
そういう状況なので、歴史情報をこうした娯楽作品からそのまま受け取ってしまいがちです。

フィクションとして楽しむのはいっこうに構わないのですが、
その娯楽作品をそのままあたかも史実のように、信じないでほしいです。
いっそ、みーんなてたらめのフィクションさ♪とぐらいの気持ちで、
気楽にみてくれれば・・・・・こんな気苦労はありませんのに。
(現実には、これで彼らのイメージが固められてしまうわけで)

いつになったら、顔だけの男から切れ者詮房に復権できるのでしょうね・・・・・。トホホ。


なにを書かれても、なにも声を発することのできない、歴史の彼方の彼らの名誉を
こんな遠く離れた私たちが好き勝手に傷付けることだけはしたくないものです。
Commented by 入潮 at 2007-12-31 23:45 x
五代六代将軍期のことはほとんど存じない無知な様ですので、興味深く拝見しました。それで申すのも恥ずかしいのですが、最後のご意見は一字一句頷きながら拝見していました。
人口に膾炙した伝説は、それはそれで文化として尊重すべきものかもしれません。けれども、記録によって事実の確認が可能である部分は、何が虚構で何が事実なのか、明らかにしておくことの意味は大きいと思います。それが、実際に我々の礎となり、日本の国を作ってくれた先人たちへの礼儀であると思うのです。その意味で、メディア作品には、故人への礼を逸したものが目について、悲しい思いをすることがしばしばです。

けれども、はなさんのような、在野から確たる歴史の一場面を分かりやすく発信してくださる方々の存在は、心無いメディアへの恫喝になるのではないかと、密かに頼もしく思っております。

今年一年、はなさんの呈してくださる情報やご見識に、非常に楽しく勉強させていただきました。ありがとうございました。今後も楽しみに訪問させてください。
Commented by はな。 at 2008-01-01 13:21 x
入潮さん、コメントありがとうございました。
ドラマはドラマ(今回は映画ですが)として楽しむべきものとは重々承知しているのですが、日本人はおそらく極端に外国と比較して自国史に疎いと思われるので(それは自分も含めて(汗))、とてもフィクションを楽しめる環境ではないのに、いいかげんなストーリーものばかりで、しかもそれを鵜呑みにしやすいムードなのが、悩みの種です。
今回の「江嶋生嶋」は何度もいままでも舞台や映画やドラマにされていて、フィクションがまるで既成事実のように扱われているので、もう諦めるべきかと思うのですが、・・・・・・・これがどうにも諦めきれず、ついつい小姑のようにガミガミいって、注文をつけてしまいます(笑)。言わんでいいことじゃないか、とときどき自己嫌悪に陥ったり、猛反省もしているのですが、入潮さんにこうして温かいコメントをいただくと、もう少しがんばってみよう、と勇気が湧きます。帰国まもなくでいろいろお忙しいなか、本当にありがとうございます!今年もどうぞよろしく御願いいたします。
by aroe-happyq | 2007-12-28 11:49 | ちょっと元禄・正徳 | Comments(2)