人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

東都アロエ

そして慶喜は @『徳川慶喜公伝史料編』

『徳川慶喜公伝史料編』からみる、弘化・嘉永ごろの慶喜と
将軍家の父子のシリーズ、最終回。

では慶喜としてはどう考えていたの、という素朴な疑問ですが、
この時期のこの人の書簡で残っているものがとても少ないので
その本音を伺うのは少しムズカシイです。

ですが、『徳川慶喜公伝史料編』に一通、この時期のものが
出ているので、まずはそれをみてみたいと思います。

「史料番号21 嘉永6年8月12日 烈公(水戸斉昭)への呈書」より

・・・・(季節の挨拶割愛)・・・この節世上にてもっぱら取沙汰仕候、
私事御養君の思召にも被為在候哉にもっぱら取沙汰仕候、
若御登城にても、かようなる義御聞被遊候はば、堅く御差留め被遊候様奉願候。

 
世上では慶喜(自分)を将軍後継者にという話が取り沙汰されているけれど、
もし登城して際に斉昭の耳にそういう話が聞こえたら、
堅くお差止めくださるようお願いします、という内容です。
将軍継嗣問題で、いちばんハッスル♪しているのが、水戸斉昭だと
わかっているので、あえて釘を刺しているようにもみえます。

さらに続きます。

天下を取候程気骨の折れ候事は無之候。骨折れ候故いやと申義にし無之候得ども、
天下を取り候て後到しそんじ候よりは、天下を不取方大いにまさるかと奉存候。
・・・・・・(略)・・・・
猶々当一橋にても、愚私之器量にしすぎ候事にて、家中の世話さえも中々
行届き不申候、況(いわんや)天下取り成り候は、是天下滅亡之基ひと奉仕候。
何とぞお差留のほど偏に奉奉願候。


慶喜といえばこの台詞、というように有名な言葉が登場しました!(笑)
「天下を取ることほど、気骨の折れることはない。天下を取って、仕損じるよりは
天下を取らないほうがまさるかと思われる」←意訳にて失礼。
(某ヒロイン厚化粧大河でも、こんな田沼意次@剣客商売の息子さんがいたような(爆))
さらにこの手紙では、
一橋家を相続しただけでも、自分には過ぎたことで、家中の運営なども
行き届かないというのに、まして天下を取るなどと、これは天下滅亡の原因になります、
・・・・・とまたまた意訳でおおくりしましたが、
鶴御成騒動から約10ヶ月後、家慶が薨去して2ヶ月。
17歳の慶喜の・・・・けっこう本音ではないかと思うですが。みなさんいかが思われます?

この年の7月1日にはアメリカからの国書が公開され、
これをどうするべきかについて大名、旗本、町人に対して意見書の提出が
求められました(のちに勝麟太郎はこれが出世のきっかけになります)。
意見といわれても・・・・と困る大名が多くて、だいたいの大名家では
お抱え儒者に内容を書いてもらったりということですが(笑)、
一橋慶喜も同様だったことを、懐古談にて語っております。
(史料24 嘉永6年の上書に関する談話 参照)

この時は勿論、ハルリス渡来の頃にありても、尚外国の形勢に到りては全く
不案内なれば、確乎たる対外意見の立つべきはずなし。


学問よりは武芸が好きな慶喜。本を読め、読めと父の斉昭に
言われ続けていた少年時代でしたので、こんなもんでしょう(笑)。
ハリスが江戸に来た頃、ようやく岩瀬肥後守や川路左衛門尉などと交流が
できて、少しずつ外交についてレクチャーをうけたりしたようです。
・・・・とはまだまだ先の話。

たいして意見もない、主張もない慶喜は、自分はそんなに大きな男じゃないんですけど、
と思っているのに、周囲(もちろんその筆頭は実父(笑))
の期待ばかりが膨らんで、困っていたような????

というのも、『父より慶喜殿へ 水戸斉昭一橋慶喜宛書簡集』(大庭邦彦著 集英社)
をみてみると、一年後くらいの書簡には、慶喜に「痰気」という慢性胃カタルや、
「溜飲」という消化不良のよる胸焼けなどの持病があるのです。
これって、フツーに考えてストレス性・・・・・ですよね。
(まさか毎回の食事をドカ食いしているとは考えにくい・・・・・)
登城すれば妙な噂が飛び交い、彼を嫌いな家定や井伊さんたち紀州派の
冷たい視線にさらされて、けっこうキツかったのかもしれません。
自信家だといわれる慶喜ですが、実は気遣い屋で、気も小さいです(きっぱり)。
とはいえ、いろいろな姿をみせる、幕末の大スター慶喜公ですので、
こういう姿もまた、彼のほんの一面ではないだろうかと思いますが(笑)。

そしてこの対立が結局、幕府瓦解へと繋がるわけなので、
「況天下取り成り候は、是天下滅亡之基ひと奉仕候」という慶喜の言葉は
まさに大当たり(涙)。 
・・・・しかしその根本原因は、家慶の愛がいけなかったのか???
という身も蓋もないぼやきで今回の慶喜&家慶&家定特集は幕とまいりましょう。
Commented by きりゅう at 2008-06-02 15:43 x
いやいや。
同じ叫びをTVの前でしていた者が
ここにも若干一名(^^)
おまけに、
同じ回で↑の慶喜の台詞が……。
そして家定の台詞に絶叫し……。
ある意味で、スリリングな回でございました(^^)
Commented by はな。 at 2008-06-03 00:38 x
ありがとう!同志がいてくださって心強うございます☆
もうね、先夜の回は抱腹絶倒でした。
阿部ちゃん、最後にコレなのか~~~みたいな。
そしてちょうど史料で慶喜の言葉を読んでいたら、TVで
同じ台詞が出てくるし(だけど安政4年て、随分後の発言ですが)。

で、なぜか今日、昼間「大奥」やってて。
こっちの篤姫さん、やっぱりいいかも(笑)。
by aroe-happyq | 2008-06-02 11:36 | 江戸城の大旦那 | Comments(2)